ヨックモックミュージアム 開館記念第3弾
『ピカソのセラミック-モダンに触れる』展

展覧会名:ピカソのセラミック-モダンに触れる / PICASSO Ceramics: The Modern Touch

会期:2022年10月25日(火)〜2023年9月24日(日)

監修:河本真理(日本女子大学教授)

主催:ヨックモックミュージアム

休館日:毎週月曜日(ただし月曜日が祝日の場合は開館)、年末年始

後援:港区教育委員会

特別協力:株式会社ヨックモック

概要

ヨックモック・コレクションをさまざまな視点からご紹介する展覧会の第3弾として、「ピカソのセラミック-モダンに触れる」展を開催いたします。ピカソと20世紀美術の代表的な研究者である河本真理氏(日本女子大学教授)を監修者にお迎えし、ピカソのセラミックの世界を、いま改めて「モダン」――言い換えれば「クラシック」と融合する「モダン」――の視点から読み解く、刺激的な展覧会です。
ピカソが第二次世界大戦後に傾倒したセラミックは、当館のこれまでの展覧会「ピカソ コート・ダジュールの生活」(2020-2021)や「地中海人ピカソー神話的世界に遊ぶ」(2021-2022)でもご紹介したように、地中海世界の神話や古代美術への接近、陶器の伝統との関わりといった観点から語られることが多いといえます。これは確かに、ピカソのセラミックの重要な特徴をなしています。
その⼀⽅でピカソは、セラミックにおいてもキュビスム的な静物や顔をデザインし、コラージュやオブジェのように、現実と虚構の狭間を戯れてみせました。ピカソが若かりし頃に創造したキュビスムは、ピカソのセラミックにおいてもずっと⽣き続けていたのです。
ピカソはまた、「壺の中の壺」を作ってみたり、メタモルフォーズの⼒で、壺を⼥性にも(抽象的な)⿃にも変容させてみたり……さらには、どちらかといえば、どっしりとしたイメージの強いセラミックで、ダンスなどの軽やかな動きを表そうとします。美術におけるダンス/運動の表現は、もちろん古代からあり、古くて新しいテーマといえますが、ピカソは踊り子を極度に単純化・記号化するなど、彼独自のモダンな再解釈を際立たせています。

このように、ピカソのセラミックには、モダンなものが底流として流れており、古典的なものもモダンなやり⽅で再解釈しているのです。

本展では、ヨックモック・コレクション所蔵のピカソのセラミックを、20世紀美術の中に位置づけながら、その新しい⾒⽅をご紹介します。遊び⼼に満ちた、多彩なピカソ芸術の世界に触れてください。

 

構成:全3章

1章 キュビスムと現実/虚構の狭間

ピカソが若かりし頃の20世紀初頭に創造し、その後のピカソ芸術の基盤となったキュビスム。三次元的対象を二次元的平面に解体・再構成する大胆な造形を試み、コラージュも生み出したキュビスムは、20世紀以降の芸術にきわめて重要な役割を果たしました。
この章では、キュビスム的な静物や顔がデザインされたセラミックや、コラージュやオブジェのように、現実と虚構の狭間を戯れた作品(魚が盛り付けられた皿など)を取り上げるだけではなく、形態(輪郭)と色彩を分離することによって対象を解体し、一見何が表されているのか分からない、一種のカモフラージュのような効果を生み出した作品もご紹介します。


《ケープで牡牛をはらう》1959年

オリジナル・アンプラント、白土、化粧土の装飾、一部に透明釉、ベージュ色のパティナ
4.1 × 42(径)

パブロ・ピカソ《ケープで牡牛をはらう》A.R.417 01-07-1959


《静物》1953年

型押成形、白土、色化粧土の装飾、掻き落とし、透明釉
4 × 39× 31

パブロ・ピカソ《静物》A.R.219 1953


《3尾の鰯》1948年
プレス成形、白土、化粧土の装飾、掻き落とし、粘土の付加、透明釉
4.7 × 37× 30.5

パブロ・ピカソ《3尾の鰯》A.R.34 1948年

2章 メタモルフォーズと遊戯

ピカソにとってセラミックは、絵画や彫刻と同様、遊び心満載の実験を試みることのできる媒体でした。この章では、そうしたさまざまな側面をご紹介します。
ピカソは、壺の構造そのものを問う「壺の中の壺」を作ってみたと思えば、今度はメタモルフォーズの⼒で、壺を⼥性にも(抽象的な)⿃にも自在に変容させました。
「連作」は、セラミックと絵画・版画の重要な共通点として挙げられますが、ピカソが、モダン・アートの巨匠エドゥアール・マネの有名な《草上の昼食》をもとにした一連の「変奏(ヴァリエーション)」には、絵画・版画だけではなく、本展で取り上げるセラミックのヴァージョンもあります。
「ひび割れの美学」は、ピカソ自身が意図したかどうかは別に、セラミックの制作につきものの「偶然」の要素が、きわめて面白い効果を挙げている例です。

《壺のある水差し》1954年1月12日
ロクロ成形、白土、色化粧土の装飾、陰刻、一部に透明釉
30 × 18 × 26

パブロ・ピカソ《壺のある水差し》A.R.226 12-01-1954

《泉》1954年1月11日
ロクロ成形、白土、色化粧土の装飾、陰刻、一部に透明釉
30×25×16.5

パブロ・ピカソ《泉》A.R.225 11-01-1954

3章 ダンス/運動:セラミックは踊る

美術におけるダンス/運動の表現は、もちろん古代からありましたが、19世紀には印象派・ポスト印象派、20世紀にはマティスや未来派らが大いに着目し、ピカソ自身、バレエの舞台美術に携わるとともに、1925年には油彩画《3人の踊り子》を制作しています。晩年になるとピカソは今度は、どちらかといえば、どっしりとしたイメージの強いセラミックで、ダンスや運動の軽やかな動きを表そうとするのです。
この章では、ダンス/運動を表した一連のセラミック作品に焦点を当て、ピクトグラムに近いほどまでに踊り子を単純化・記号化したり、「カット・アウト(cut-out切抜き)」と「折り」の構造からアスリートを生み出したりする、ピカソ流のモダンな再解釈を探ります。さらには、ダンスを含む《生きる悦び》が示唆する、第二次世界大戦後の芸術と社会のユートピアについても考察します。

*同一作品の各側面

《踊り子と楽師たち》1950年
オリジナル・アンプラント、ピンク系土、陰刻、化粧土の装飾
70.5×33×32.5

パブロ・ピカソ《踊り子と楽師たち》A.R.114 1950


*同一作品の各側面

《踊り子と楽師たち》1950年
オリジナル・アンプラント、ピンク系土、陰刻、化粧土の装飾
70.5×33×33

パブロ・ピカソ《踊り子と楽師たち》A.R.114-B 1950


《踊り⼦》1956年
オリジナル・アンプラント、白土、呈色酸化物の装飾、蝋抜き、透明釉
1.5 × 18.7(径)

パブロ・ピカソ《踊り⼦》A.R.387 1956


《踊り⼦》1956年
オリジナル・アンプラント、白土、化粧土の装飾、掻き落とし
1.3 × 19(径)

パブロ・ピカソ《踊り⼦》A.R.388 1956

 

監修者:河本真理 Mari Komoto

専門は西洋近現代美術史。パリ第1大学博士号(美術史)取得。現在、日本女子大学教授。著作:『切断の時代-20世紀におけるコラージュの美学と歴史』(ブリュッケ、2007年)、『葛藤する形態-第一次世界大戦と美術』(人文書院、2011年)。共著に『現代の起点 第一次世界大戦 3 精神の変容』(岩波書店、2014年)、『ピカソと人類の美術』(三元社、2020年)など多数。サントリー学芸賞(2007年)、渋沢・クローデル賞ルイ・ヴィトン ジャパン特別賞(2007年)。

 

関連イベント:(随時公式サイトにて発表予定)
・講演会
・ギャラリートーク(当館学芸員による)・学校連携プログラム
*学校団体見学についてはお問い合わせください。
・ラーニングプログラム「ピカソde アート」
・同時開催「ヨックモックミュージアム常設展2022-2023」

・音声ガイド(無料)
*ご自身のスマートフォンとイヤホンをお持ちください。アプリのダウンロードは不要です。本展監修の河本先生に作品解説をお願いしております。

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