当館公式アンバサダー様2名と当館学芸員による座談会を開催しました。
(画像右より、クヌルプさん、飯田さん、学芸員の富安さん)
今回のテーマは「ヨックモックミュージアムのおすすめポイント!」
富安さん(学芸員 以下省略):ヨックモックミュージアムを知ったきっかけはなんですか?
クヌルプさん(第2期SNSアンバサダー 以下省略):私は職業柄、事前に知っていました。
富安さん:ご来館も?
クヌルプさん:はい。
富安さん:ありがとうございます!いかがでしたか?
クヌルプさん:ヨックモックを代表する焼き菓子の「シガール」が、フランスの画家の静物画(※1)の中に描かれた巻き菓子をヒントにつくったというのを聞いていたので、それを踏まえて、美術とお菓子をつなげた企業であるヨックモックの会長が、今度は美術館を建てるんだ!というのが、とても関連性があって面白く、楽しみにしていました。実際来館して、今までほとんどピカソの器をこれだけまとめてみることがなかったので、それがすごく新鮮でした。ピカソは絵画作品しかほとんど見たことがなかったので。
飯田さん(第2期SNSアンバサダー 以下省略):私は、今回のSNSアンバサダー募集の情報を美術検定(※2)さんのメルマガで拝見し初めて知りました。初めて知った時は「ヨックモック」の歴史などを展示する博物館だと思っていて、ピカソの作品を展示しているとは知りませんでした。ピカソの陶器作品は知っていて、最初に来館したとき、顔が描かれた黄色い皿(※3)を見て「ここにあるじゃん!」と思いました。
富安さん:2階の54点のスペースに展示している作品ですよね?あの作品をご存じだったんですね。
飯田さん:以前、埼玉県立近代美術館の展覧会で見たとき、「かわいい~!」と思っていて記憶にあったんです。なので最初に来たときに、「ここにある~!こんな近くにあったんだ!!」と思ったのが印象に残っています。
富安さん:今回、当館のSNSアンバサダーに就任され、改めて、おすすめのポイントを教えてください。
クヌルプさん:常設展からおすすめすると、2階の天井が高くて54点の皿がワッと展示されているあの空間では、是非誰かと一緒に来ていろんな話をしてほしいです。例えば、あのお皿を室内空間で飾りとして飾るならどこに置く?とか。私の場合は、飾りじゃなくて何かを乗せたい気持ちにかられるので、何かの記念日や誰かとの食事会で、どんな料理やお菓子を乗せるか。その乗せた料理やお菓子は皿の絵柄とどういうつながりがあるのか。などを話し合いながら、見てほしいなと思います。それくらい広々としている空間なので、そんなに大勢じゃなければ、そんなお話もしながら楽しめると思います。空間の真ん中にあるソファーに座って眺めるのも壮観で好きです。展覧会でいうと、ピカソが版画を添えた挿絵本である『博物誌』が展示されているのですが、今回の展覧会を監修された町田さんによると、それが浮世絵の影響を受けているのではないかという指摘があるようです。ピカソ自身が青年期から浮世絵を所有していたと伺っていたので、私も最初見たときに「何かに似てる、なんだろう⁉」と思っており、江戸時代の絵師、伊東若冲の拓版画(たくはんが)で「玄圃瑤華(げんぽようか)」というシリーズがあるのですが、それにすごく構図が似ていて面白いなと思いました。そういう、「これともしかしたら似てるかも⁉」というのを見つけて私は楽しんだので、ご来館の皆様にも、違うものと組み合わせてみて楽しむこともおすすめします。
飯田さん:私もそこまでたくさんピカソのセラミック作品に触れることがなかったので、まずは「ピカソのセラミック作品」を知ってほしいです。そしてそれが、すごくかわいい!ってことを、ピカソがこんなかわいいものをつくっていたんだ!ということを知ってびっくりしてほしいです。ピカソそのもののよくあるイメージ。。。“女好きなおじさん”という。。。まぁキャッチ―ですけど。。。絵を描きながらもこんなことをやっていたんだよ、こんなかわいい作品もつくっていたんだよ。ということを知ってもらいたいです。
クヌルプさん:ピカソのキュビスムの絵が、なんだかよくわからない苦手だと思っている人、あのイメージが強い人こそ、来たらきっとかわいい印象を受けてピカソの幅の広さを感じることができると思います。本当に同じ人が手掛けたんですか⁉となります。
飯田さん:ピカソの発想力や柔軟性の凄さは、こういう作品を見たほうがわかりやすいのかなって思いました。ピカソは難しいと思っている人が多いと思うので、こんな面白い作品もつくってるんだよっ!てことも知ってもらえるといいかなと思います。
クヌルプさん:あと、フクロウ(3章)のところで展示してある、フクロウを携えたピカソの写真。
飯田さん:あれ可愛いよね!
クヌルプさん:あれも町田さんがおっしゃっていたのですが、ピカソの目ってすごく印象的で、フクロウやミミズクの目に似ていて自分を少し反映させているようだというお話もあったので、そうやってあの写真とピカソの作品を見ていくと、ピカソの顔に見えてきたりするんです。
飯田さん:似てる。ほんと似てる。
クヌルプさん:クリっとした目が、似ている。だからある種のものすごい変形した自画像みたいな印象も受けて楽しいです。
富安さん:背景的な話をすると、ピカソがセラミックをつくったのは、「アーティストも社会に関わっていこう」というところもあるし、「職人と一緒に」というのもあって、基本的に「みんなで幸せになろう」という、そういうハッピーな感じなんです。
クヌルプさん:どや⁉って感じじゃないってことですね。
富安さん:そうです。
クヌルプさん:第二次大戦中のピカソの絵画はとても暗いものが多かった気がします。すごく突き放したような、怒りというか暴力性を見る者に直に訴えてくるような感じがしましたが、ヨックモックミュージアムのセラミックは戦後の作品が多くて、生き残った者たちがこれから先、生きていくにはどういうふうに生きていったらいいんだろうね。。。それは小さいものを愛でるとか、弱い子供や女性を大事にするとか、そういったことを「陽」の明るい感じで「こういったことを大切に生きていったらいいんじゃない⁉」という、(親しみを込めて)ピカソおじさんの意外な側面を見ることができるという感じです。とっつきにくかったのに。
富安さん:「いや、俺は本来こういうやつだったんだよ」という感じかもしれませんよ。
クヌルプさん:確かに、「勝手に俺のイメージを当てはめてきただけでしょ?」と言われるかもしれませんね。
富安さん:ピカソって実はとてもまじめなんです。恋もたくさんしますが、別に同時並行で何人も分別もなく付き合っていたわけではなく、重なってしまった時があったとしても、それはそれでとても悩んでいて。
飯田さん:すごく人間っぽいですよね。
クヌルプさん:ピカソは毎回真剣に向き合っているからこそ、女性がピカソに対する思い入れも深まっているし、ただ軽く遊ばれたという印象はないですね。
富安さん:性別にかかわらず能力がある人は仲間として認めていたという事実もあり、それが日本美術やアフリカ美術などに対するまなざしにもなっていたのかなと思います。ものすごい“欲張り”なんでしょうね。いいものに出会いたい!という。
飯田さん:いろんなものを吸収しますよね。
クヌルプさん:それをアウトプットするエネルギーがあるのもすごいですよね。
※1:リュバン・ボージャン《巻菓子のある静物》ルーブル美術館所蔵
※2:一般社団法人美術検定協会が企画運営している民間検定試験。美術の知識と知見を高め「みる力」を養うプログラムとして、4級(初級)〜1級(最上級)までの4レベルを設けています。
※3:Pablo Picasso,Pipe Player,1947
次回へ続く