SNSアンバサダーによる座談会「自分にとってピカソってどんな人?」

深津さん:実は、私が今回の座談会の発案者なんです。

 

東さん:そうなんですか?

 

深津さん:せっかく4人とも『アートナビゲーター』なのに、それぞれの活動だと、つまんないじゃん⁉と思って。みなさんとお話した~いと思って。(笑)

早速ですが、「自分にとってピカソってどんな人」ですか?

私はアート関係で講師もしているのですが、ピカソの作品を紹介すると「どうしてこれがいいの?」という質問が結構出て、「僕でも描けそう」とか、「上手なの?これは」と言われるんです。そういう時にどう説明しようかな。。。って、毎回思ってます。若い時の写実的な絵を見せると、「あ。これが描けたうえで、こういう風にやっているから天才なんですか?」という感じで仰る方もいて。。。でも毎回、皆さんに考えていただくようにしています。なので、今回皆さんへの質問にこのテーマを入れました。

 

東さん:僕そんなに、作家の人生とかあんまり意識せずに観てるんですよね。自分が何かするときはもちろん調べたりするんですが、今までピカソとは特にご縁がなかったから、ピカソの人生をあんまり考えたことがなくって。なんとなく言われているピカソしか知らなかったんです。なので、ピカソを知るきっかけになった美術館です、ここは。ちょうど前回の展覧会の時に、ロベール・ドワノーが撮ったピカソの写真で、パンをテーブルの上に手のようにして置いた写真が展示されていたと思うのですが、あの写真は写真美術館でよく見ていて、対話型鑑賞などでもよく参考にしていたので、僕にとっては「子供みたいな茶目っ気のある人」というイメージです。だからああいう絵が描けるのかなってずっと思っていました。

 

深津さん:子どもっぽくて茶目っ気があって、遊び心がある人って感じですよね。

 

吉田さん:私は、ピカソって ”チャレンジャー” だと思うんです。1つのステージにとどまらないで、どんどん次に次に、上に上に、失敗を恐れずに挑んでいる。。

彼が16歳の時にベラスケスの絵を模写した作品を見たことがあるのですが、本当に見事で、見て、吸収して、自分のものにするのが、凄く上手なアーティストだと思いました。「昨日までのピカソ」と「今日のピカソ」、「明日のピカソ」って、全然違う人になっているんじゃないかと感じます。昨日とは違うものを見て、違うことを感じて、色々吸収してスピーディに変遷していく。そんなチャレンジングなアーティストなんじゃないかなと、作品を見る度に思います。特に去年から今年にかけてピカソの展覧会が多いので、強く実感しました。

 

深津さん:キュビスムだけでもたくさんありますよね。

 

吉田さん:とても多いし、他の画家からたくさん吸収してますよね。それを飲み込んで自分のものにして、同じようなもの、型にはまったようなものは描かないぞ!という挑戦心を感じます。

 

深津さん:長生きだし作品も多いのに。

 

吉田さん:そう!勢いが全然衰えないし!

 

山下さん:私にとっては、ファーストインプレッションから何か引っかかる存在だった気がします。美術館が好きな母に連れられて色々と見る中で、子供ながらに、ピカソは何かが違うな、と。。。今思えば、それはものの見方とか、とらえ方なのかなと。父が写真家で、被写体と向き合う姿を見て育ったので、その影響もあるかもしれません。

そういうなんとなくのところから、どハマりしたのが20歳くらいだったと思います。きっかけは、今回「Ⅲ ダンス/運動:セラミックは踊る」でも言及されている『パラード』(1917年)というバレエ作品で、私は専門が音楽で、ピアノを弾くんですが、連弾でこの作品を演奏する機会があったんですね。それで、舞台美術をピカソが手がけていることを知りました。音楽も、サイレンとかピストルとか騒音を使っていたりしてなかなかぶっとんでるんですが、ピカソの舞台美術も、セットはまんまキュビスムだし、衣装も巨大なハリボテみたいで相当ぶっとんでて。。。最高だなと思って(笑)。

それで興味を持って調べたら、ピカソにあまりにも多様な側面があることを知って、驚きましたね。この人、一体何人分の人生歩んでるんだろう?って思ってます。絶対、一人分の人生じゃないですよ(笑)。ピカソは、知れば知るほど、また新しい一面が見えてきて圧倒されるというか、音楽家としての自分を刺激し続けてくれる存在です!

 

東さん:「何人分の人生」、本当ですね。

 

深津さん:プライベートも何人もの女性がいらっしゃったのかな?って感じですよね!作家人生が何人分もあるように感じますが、プライベートも人生も何人分もあったように感じますよね!

 

吉田さん:人並外れたエネルギーがありますよね!築いた家庭を壊すエネルギーも、更に新しい関係をつくっていくのも厭わない。普通、別れるのもエネルギーが要るじゃないですか。。。

でも作品づくりにこれだけパワーがあった人が、おとなしい人生を送っているわけがない

ですよね。。。(笑)

 

山下さん:なるほど!確かに!

 

深津さん:もしかして、関係がダメになっていく時期とか、わかれようみたいなときには、そこには関心がなくて、いつも面白いもの興味があるもの次のものにエネルギーが向かっているから、別れに負担がなかった時期もあったのかもしれませんね。

 

東さん:これだけピカソの評価が違うって凄いですね。

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