『公式SNSアンバサダーによる座談会』開催

 

当館公式アンバサダー様4名による当館について語る座談会を開催しました。

前回は、「自分にとってピカソってどんな人?」というテーマで語っていただきましたが、

今回のテーマは、『現在開催中の企画展「ピカソのセラミック-モダンに触れる」で好きなところ』です。

 

Theme2:企画展「ピカソのセラミック-モダンに触れる」で好きなところ

 

【その1】誰もが楽しめる展覧会構成

 

東さん:それでは、現在開催中の展覧会の好きなところはいかがでしょうか。

 

山下さん:前回、前々回と比べて、今回のテーマはちょっと抽象度が高いですよね。そのおかげで、色々な楽しみ方ができる展示構成になっている気がして、そこが好きです。例えば、絵画でのキュビスムを知っているからこそ、セラミックでもそれが展開されているのが面白いとか、《泉》や《草上の昼食》なんかは元の絵画を知っているから面白いっていうのはあると思うんですけれど、逆に、知識があまりない方が、余計なことを考えずに自由な発想で楽しめることもあるのかなって。自分は、コンサートなどでは音楽もそのように提供できたらと思っているんですが、知識があってこその鑑賞も、ゼロベースで楽しむ鑑賞も、どちらにも良さがあると思うので、みんなを連れて来て、それぞれの反応を見たくなる展覧会です。

 

深津さん:色んな方と一緒にご来館されているんですね。

 

山下さん:誰かと一緒に鑑賞することで、自分とは異なる視点を知ることができるのが楽しいし、そこに本質があるとも感じています。

 

【その2】展覧会最後のスペースに用意された全員参加型のお楽しみ

 

深津さん:私は小学生と作品を観るといういう活動もしているので、どうやって観たら楽しいかなぁというのを考えていたので、そういう視点でのお話を伺いたいと思っていました。今回は展覧会の最後に「姿見(鏡)」があって、隣の壺に描かれている人体を真似してみようというのがあるのですが、あれがとても「素敵!」と思いました。イベントの時だけに鏡が出てくるのではなく、展覧会の中に組み込まれているのが、『みんなが対象になっている』メッセージがあって凄く楽しいなぁと思いました。

 

山下さん:先日私がお連れしたのは大人の方々でしたけれど、「これ、やっていいんだよね?」と、楽しそうにやってくださっていましたよ!

 

吉田さん:子供用じゃないのがいいですね。鏡があることで、能動的に作品に関わるいいきっかけになると思います。鏡がないとなかなかポーズはとらないでしょうし。(笑)

 

東さん:あの鏡はどこから来たんだろう?と思ってました。なんか形が面白くて、これも作品かなと思っちゃいました。気になってます。

 

深津さん:彫刻などの立体作品を観るときに、形を真似してみようという鑑賞プログラムがよくあるんですが、グループでなくても1人2人で来た人でも鏡があることでやってみることができるのが面白いなと思います。

 

吉田さん:ポーズを真似るのは、私も子どもたちとの鑑賞プログラムでよくやります。「作品をよく観る」ということに繋がって、細部をじっくり見てどうなっているかということに深く入り込むので、とてもいい試みだと思います。

 

【その3】伸びやかで明るいピカソの作風にマッチする工夫された展示

 

吉田さん:ピカソが南仏のヴァローリスに来たときは、とても明るい気分だったと思います。ここを拠点にしていた1948年から54年は、ピカソが67歳、ちょうど戦争も終わり、社会のムードも抑圧された状況から開放的になっています。プライベートでは、フランソワーズ・ジローとの新しい家族もできて、赤ちゃんも生まれ、温暖な海辺で楽しい家庭生活を送っています。戦争という暗い時代を経て、ピカソの作品は難解なものから、親しみやすくてわかりやすくなってきたと思います。そんな伸びやかで明るい作風のセラミックを、この頃夢中になってたくさん制作して、セラミックの展覧会も開催しています。

そんな作風と、空間にお皿がポコポコ浮いている展示がありますよね?それがとても合っていて、リズミカルですし、モチーフが魚なので、海で回遊しているようでユーモアさえ感じられます。様々な展覧会を見ていても、なかなかあういう立体的な展示はないのでとても印象に残ります。

 

山下さん:水族館みたい?ですよね。

 

吉田さん:そうですね、暗いこともあって、空間に浮かび上がって、テンションが上がる展示方法です。

 

深津さん:私は裏が見えていいなぁと思いました。

 

吉田さん:それもいいですよね。壁についている展示ばかりじゃなくて、リズムを感じます。

 

東さん:魚のところの三角の台のところも形にこだわりがあるのかな?と思いました。四角だと通路が狭くなるので、三角にして通路を少し広くしたのかな?と。広くなったり狭くなったりで、ちょっとぶつかりそうで危ないなと思うこともあるのですが(笑)、照明があたって泳ぐように見えますし、だから裏も見たくなる。そんな仕掛けを感じます。

 

山下さん:私もあの展示方法、画期的で良いなと思います。周りをぐるぐる回って、表も裏もじっくり見ちゃいます。

 

東さん:学芸員さんのギャラリートークでも海みたいだと仰っていて、「本当にそうだなぁ!」と感じてました。

 

【その4】ポスターの謎

 

山下さん:そういえば、今回のポスターに使われている作品を見て、「お皿に見えない」とか「丸い絵かと思った」っていう声をいただいたんですよ。

 

吉田さん:2次元だと思われたんですね。

 

山下さん:写真だと立体感が伝わらないみたいで、生で鑑賞する大切さに改めて気付かされましたね。

 

深津さん:「なるほど」がいっぱい出てきますね!

 

【その5】ピカソの集大成を感じるセラミック作品

 

東さん:色んな人のを吸収して、どんどん描いていくっていう、いろんな作家の模倣というか、いろんな作家へのオマージュを感じる作品たちを、特に展覧会の中盤から後半感じました。それは凄い、面白いなぁと思ってました。色んな展示観ると、だいたいピカソの小さい頃の上手いところから、青青の時代、バラ色の時代とか、全部見せるじゃないですか。それの集大成みたいなものが晩年のピカソのセラミックに在ると、そんな風な構成になっているような気がして。だから、ポーラ美術館に行って、再度ヨックモックミュージアム来て確認してみたりとか、それぞれの展覧会に行って、もう一回来てみるとすごく色んな気づきがあると思います。今回、抽象性とか、どんな視点でも見方があるという1つとして、ピカソの技術がギュッと凝縮しているところが凄いなぁと。それは企画者の意図として、キュビスムがセラミックのここにもあったみたいな発見の仕方が面白いなと感じました。

 

深津さん:絵画作品と分けて、ちょっと余暇的な感じにみられる場合もあったかもしれませんが、そうじゃなくて、全部が繋がっているということを感じさせてくれる展覧会だと思います。

 

吉田さん:ピカソは、マネの《草上の昼食》から触発された絵画作品をたくさん描いているんですよね。その中でセラミックの作品も作ってみたのでしょうね。

マティスが病気になってから始めた切り紙絵からも影響を受けているように感じます。この展覧会は、ピカソが様々な画家から受けた影響を総合的に感じることができますね。

 

深津さん:今までピカソの絵画だけを観てきた方々も、この展覧会をご覧になって、もう少しピカソの全体像が分かるのかもしれないと思います。

 

東さん:同時代性とか、同時代の作家なども、よくわかりますよね。やっぱり影響受けますよね。

 

吉田さん:大いに受けますよね。同時代の身近な友達の影響ですしね。どんなものを描いているか気になるでしょうし、凄い!と思えばすぐに積極的に取り入れてみるでしょうし。

 

東さん:でも必ず「ピカソらしい」というのが凄いっていうのを改めて感じさせてもらえます。

 

深津さん:自分のものにしちゃうのが凄いんですよね!

 

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