(第1回から続く)
生まれ故郷のマラガと近しい文化土壌をもつ南仏コート・ダジュール地域に移り住み、地中海世界への帰還を果たしたピカソですが、制作上、それまでのパリ時代との大きな違いが、セラミック作品の制作への熱中でした。慣れ親しんだ風土に戻った喜びが、セラミック作品の制作に注がれたといってもよいでしょう。彼は地中海世界に育まれた風土や文化に改めて出会い、モチーフとしてさまざまな形で作品に取り込みました。
そのため、これらのセラミック作品からはピカソの精神的ルーツ、いわば地中海に生きた人々の精神世界の古層をかいまみることができるのです。
本展では、全体を4つの章に分け、それぞれを「1章 神話世界と動物たち」「2章 プロヴァンスの幸(さち)と鳥たち」「3章 闘牛:古代地中海世界からの儀式」「4章 人間愛とヌード賛美」としてご紹介しています。
次回からは各章を見ていきましょう。
なお本展は、スペイン美術史研究の第一人者、大髙保二郎先生(早稲田大学名誉教授)のご監修をいただいています。
(第3回に続く)